7月7日・12日 批評会

①竹宮辰「かわいい肉」

 

はじめに

 不快感が快感になるというプロセスを描きたいと思った。

 

批評

 

 いつもの作者さんに比べると読みやすい、明るいと感じた。三文文士会童貞炙り出しツールになってしまったなと思った。いつもだったらもっと描写気持ち悪いかなって思いました。いつものはもっと不快だったので、今回はどちらかというとエロスを感じた。「知るかバカうどん」で想像していたのでみうは可愛い系かなとは思ったんだけど、人間的魅力は感じなかったかな。ただ、もともと女子高出身で大人しめという性格に魅力を感じるかもしれない。からかいとかじゃなくて、静かに「かわいいな」とか言ったらほろりと転ぶんじゃないかなとか思った。自分はイケメン目線(みうを性的に消費する目線)で考えたが、それは神の視点に近いのであんまり内部の視点に近いのかなと思った。

 

 僕はハッピーエンドで終わると信じたい(笑)。素直に面白いと感じた。書き慣れてきた人は得るべきところを得ている感じがする。まず単純に描写が上手い。主人公の状況分析にも主人公の視点が入り込んでいることはすごいなあと思う。質問事項から、作者は不快な描写をトータルで快にしようとしているのではなく、不快なものを快く描写しようとしているのかなと感じたので、その点では成功しているように思う。作品は場面的な小説なので、これで魅力を感じさせようとするのは無理があるように思う。というのも、見た目の魅力を感じさせる小説なので、設計として魅力を感じなければ小説として失敗ではあるんだが、トータル人間全体を魅力に感じたかと言われると微妙なように思う。主人公にとって魅力的な人なんだろうというのは感じた。この作品は、始まりがあって終わりがあるというよりは、ひとつの世界を提示するというものになっている感じがする。動的なストーリーであれば、冒頭部なのかな? というような感じ。場面がどんと出されて、「さぁ読んで」というタイプの作品であるように思うし、そういう狙いであればある種成功しているのかなと思う。自分は細かい場面を積み重ねるタイプなので対照的だなと感じる。タイトルも、かみしめるとなんだか不安な感じがする。書いたのが男の人だと思っていたので、女性の作家がこういう主観描写をできるのはすごいと思う。一人称だとめちゃくそ感情移入してしまってあんまり不快さが伝わってこないなぁと個人的には思う。全員がみうを美人ではないと合意している点はちょっと気持ち悪いなぁと思った。質問事項については不快→快に代わるというところがよくわからんかった。

 

 地の文と会話の配分が分かりやすく、登場人物のかき分けもきちんとなされていてよかったと思う。不快には感じたが、同性としては魅力を感じない人物だなと思った。友達にはなりたくない。

 

 批評に困ったというのが正直なところ。というのも、批評に当たって食指が動かなかったからだと思う。おそらく全編を通じてあまり快く思わなかったというのがその原因だろう。作品の中で不快に位置づけられているというよりは、作品世界全体を不快に感じた。みうの人間性を評価するためにはやはり情報不足であるように感じる。

 

 批評しづらいなと思ったところがある。何を取り上げたらいいのかというのが正直わからない。一人一人の関係性とか、サークル全体の雰囲気の気持ち悪さとか、そういういろんな要素が絡まっている一方で、どの方向性にも煮え切らなかったのかなというのが正直なところ。過去の描写を通じての変化も生かし切れていないような気がするし、他のキャラクターも、それぞれ属性づけられている割にはあまり機能していないように思う。作品に対してはやはり不快に感じた。女性に対して誠実な態度とは言えない(憤怒)。彼女は、主人公にとっては魅力的な人なんだろうと思う。

 

 大変不快な作品になっているかなという感じ。「ミニブタ」とかいう描写が非常に不快だった。女性は大切にしなくてはいけないと思って生きていたので(憤怒)。ただみうの方は可哀想に感じたので、主人公ははやく彼女をつれて逃げていってほしいと感じる。とにかく二人には幸せになってほしい。

 

 全体的に読みやすい文章だった。

 質問事項について。自分は当人が幸せならそれでいいと思っているが、それでもあえてフィルターをはずすと部分的には不快に思った。罵倒の仕方が好きになれない。あと、こういう境遇が幸せにならないことが明らかなのに、それを放置する主人公の態度には腹がたった。みうに対しては魅力を感じなかったが、主人公は感じているのだろうなと思った。

 

 質問事項について。みうのしゃべり方が不快だと思った。自分の言われたくないことを回避する方法だってあるはずなのに、それをやらずに現状に甘んじているのが腹立たしい。みうと同性だから自分は嫌に感じるのかなと思った。着ているものの描写がとくにそういう点を感じた。いじり方よりも態度の部分が不快。違うから嫌いだという女性と、共通点を感じるから嫌いだという女性がいると思う。誰目線で見るかという話が上がっているが、自分は近くで静かにご飯を食べている、みうにそっくりの女子目線でみていたから、神の視点とは真逆ですごく不快だった。みうは強い自分を演じてはいるけど、もしかしたら危ういバランスのうえに立ってるのかなと思ったらとても可愛そうになった。

 

 2ページという短い作品ですがエッセンスが詰められていてよかったと思う。自分でも気づいていないような不快さがあって、不快のバラエティがすごいなと思う。さぁこっから始まりだと思ったところで終わってしまったのはちょっと残念。もう少し先まで描いていけば、さらなる深みを出せたのかなと思う。

 質問事項について。みうには重たいので男の膝に座らないでほしいなぁと不快に思った。本人が体重を知っているならなおさらだなと思う。

 

 オタサーの姫の模範解答だな(笑)。遭遇したら苦手な女の子なんだろうなぁと思うんだけど、創作物としてみるとそんなに気にならなかったかなという印象。想像の域を出ないからあんまり不快に感じないのかな? 男性から見たらかわいらしいんだろうなという視点から見てしまう。語っている男性の方が私利私欲にまみれていて気持ち悪いなと思った。でも親近感も感じる。不快というか、あぁいるよねって感じ。

 

 自分には批評できねぇなぁと感じてしまった。話のテーマが難解だった……。

 質問事項について。みうの「もう、人間だってば」の発言に腹がたった。本心では思っていないけど盛り上げるときのコメントが、あからさまに演技的だとちょっといらっとくる。当然、みうにも魅力を感じないです。

 

 二つ奥のテーブルで見てる女子学生の視点で見ていた。キモいなぁって思いました。全員キモいなぁって思う。自分のペットを自慢してるみたいな不快さがある。あと陰キャは食堂行っちゃいけないよ。

 

作者から

 いろんな結論を導きだす人がいて面白かったなと思った。個人的には全員がこの関係を続けていくことがベターかなと感じた。不快が快に変化するというのは、登場した女子学生の目線から、だんだんと主人公に移入していくというプロセスを取りたかった。まさかイケメンの視点が出てくるとは……。もっと作品を長くできたら面白いのかなと思う。

 

 

②切腹百子「コンプロマイズド・ホスト」

 

はじめに

質問事項については、小説を書く上で自分がほかの人より優れている部分を活用しないと難しいと思うので、そういうところが気になった。この作品の中で一番可哀想だなって思う人物がいたら教えてください。

 

 

批評

 

 ピュアなので読むだけで精いっぱいだった。このあたりへの知識が欠如しているので批評がしづらい……。最初の一文は軽口でよかったなと感じた。

 質問事項について。どんな知識も勉強しても人以上に優れているということは難しいが、卒業した母校の文芸部の知識については人並み以上に優れている自信がある。ほかには、地理学専攻なので地理については詳しいつもりでいるが、こないだチャオプラヤ川の位置を間違えたのでちょっとショックだった。知らない人に比べれば詳しいといえるジャンルでも、知っている人からすると大したことないってこともある気がする。普段から触れているものは好きになると思う。

 

 ともかくうまい! それしか言えない。場所のシュールさと、人間としての生々しい本質が抉り出されていてすごいなと思う。自分だったら主人公に尿検査とかさせないなぁと思うと作風の違いとかも感じた。ぐっと親近感がわく。人物描写が結構ライトだったので、もう少し質量があってもいいのかなと思った。とくに首高の人格はあんまりリアリティがなかったのだが、それはさいごの独白におけるキャラクターとその前の性格の間に媒介がないからだと思います。一つの考え方として、首高は潔癖に近いのかなと思った。本能的な支配ではなく、理性的な支配のロジックなのかなぁと思った。主人公は可愛そうに思える一方で、なんか面の皮厚いなぁとも思った。どうやって書いたらいいかわからん。展開とか、動かし方とか。ファミレスで首高と会うシーンだけ他と雰囲気が違うような気がしたのだが、多分その正体は「軽さ」にあるのだと思う。おそらくここだけ回想の描写がないことが、軽さを際立たせているような気がする。これはこれでいいような気もするが……。性病についての考証がすごいなとは思う一方、調べて使わなかった知識がどれぐらいあるのかなと思った。

 

 自分の小説と登場人物の名前がかぶっていた()。地理的な距離が結構計算されていて巧いなと思った。推理小説みたいなノリで読まなかったので、トリックには見事に騙された。千鶴とは食事をしないけど首高とは食事に行くあたり、結びつきが強いのかなと思った。

質問事項について。地理は住んでいると結構詳しくなっていく気がする。BLは昔は詳しかったが最近は熱意を失った。可哀想なのは千鶴。立場的に失ったものが多そう。社会的地位を考えれば猪狩が可哀想な気もする。

 

 作者さん至上最高の作品だと思う。モチーフが単なるセックスではなく、それを物語全体のストーリーの面白さときちんとリンクさせているという点が上手いなと思う。性的な部分は社会の中でひた隠しにされるものなのに対し、事件は社会の高次に位置づけられるものであり、そういうものをミックスさせるのはすごいという言葉につきるなぁと思う。結末についても、計画で成功している部分と破綻している部分がきちんと配分されていて、トリックものにありがちなリアリティの喪失を回避していたと思う。ややエッチな表現が、それとは別の感情をきちんとくみ取っていて巧いなと思った。首高は胸糞だなぁと思った。事件の首謀者である首高は同性に対するヤンデレやなと思った。

 質問事項について。自分で一生懸命勉強していてももっとすごい人がいるので至らないが、レトロモダンな知識についてはきちんと調べ上げたつもりでいるのでそれなりに詳しくなってきているかなと思っている。下層社会についてのことをとくによく調べている。あと詳しいのはアニメのガルパンです。

 

 首高もしかしたらホモかなって途中思ったのだが、まさかなと思ってしまった。まさか本当に両刀使いだったとは。同情の余地がなくもないかなとも思う。日暮里の近くに住んでいて、文京区とかもよく行くのだが、情景が良く浮かぶなぁと思った。

 質問事項について。美羽が一番可哀想だなと思う。

 

 難しい単語が多すぎて途中で心が折れた。自分はそういう知識がないので読むのに苦労した。性的記述が多くて苦しかった。ミステリとか好きなので作品の構造は面白かった。もう少し丁寧に伏線を張ってもいい気がした。読んでいたら、首高に対する怒りがふつふつとわいてきた。卑劣だ! そこまでの感情を読者に抱かせるなんてすごいなと思った。でも猪狩も紐みたいなもんだしクソ野郎だな。

質問事項について。優れていると自負している知識は鉄道。可哀想だと思ったのは首高。小細工に走るのは可愛そうだなと感じた。美羽は間接的にしか登場しないのに同情を誘うのはすごいなと思った。

 

 個人的には今回の二つの作品を一緒に読んだのだが、登場人物の名前がかぶっていて笑った。一番可哀想だなと思ったのは千鶴。利用されている感が強くて可哀想。猪狩が「自分性欲マシーンじゃない」アピールを繰り返しているのに、それを受け取ってもらえないのは悲しい。自分の個人的なエピソードから浮気が嫌いになったのだが、そのコンプレックスを刺激されてしまった。

 

 性的描写はそこまで露骨ではないと思う。この話全体ではそういう要素は大人しめなのかなと思った。

 質問事項について。自分は千鶴が一番可哀想だなと思った。ひたすら操られている感じがしないでもない。利用されてそのままフェイドアウトしてしまった感がする。オチにつながる伏線として、「食」のシーンを描いているという点が優れていると思った。欲求欠乏を補う行為になっている気がする。所謂男女の繋がりを超えた繋がりなのかもしれないなぁと思った。

 

 猪狩が千鶴とのセックスを断ったとき、それを別れるという意味なのかなと取ってしまった。

 質問事項について。千鶴が可哀想だなと思った。こんな年にもなってダメ男と付き合っているなんて情けない。その点そんな関係を断ち切った首高はヒーローなのでは?

 

 

作者からひとこと

 

 個人的にはすっごい仲の良い幼馴染がぽっとでの恋人にとられるのは悲しいなと思って書いた。質問事項については性病と風俗をめちゃめちゃ調べました。客観的には千鶴と美羽が一番可哀想なのかなと思う。首高はホモではなくフレンドシップのつもりで書いた。