編集の鈴木です。編集会お疲れさまでした。それはどうでもいいのですが、依頼されたので批評会について報告を載せておきます。
今回は2012年度の冬号から、矢崎あか氏の「或るコンビニ店員のお話」と松葉惇平氏の「最終聖職者」を採り上げました。 作品への質問事項はそれぞれ「幸せ感は伝わりましたか」、「読んでいてだれる場面があったら教えて下さい。また、印象に残ったシーンがあれば教えて下さい」というものでした。
矢崎氏の「或るコンビニ店員のお話」 については、
・起伏がない
・男視点だが、心情描写が女性っぽい
・男にしては服装など、性差で認識にギャップが出る事柄に詳しすぎる印象
・主人公の内面が見えづらい
・ラストがメタフィクションじみており、蛇足に感じた
などの意見が齎されました(ただし起伏については掌編という形式や内容そのものに鑑み、『特段用意されていなくとも問題にはならない』という反駁もありました)。あるいは、
・親切心がきっかけで登場人物の距離が縮まるというのが軸にあるので、以降にもそのような経緯を想起させるような描写がほしい
・一文が長い
・台詞がリアリズムと齟齬を来している(若年男性が『若いうちだけだろ』などという言葉を発するか? など)
・作中にて、ボーイッシュな女性が後半でいかにも「女の人らしい」行動を取る(意外性を見せる)が、目撃した男性がそれに触れないのは不自然
・映画館のシーンの会話が形式的すぎる、口語的な会話として不自然なので、いわゆる「地の文」の挿入で抑制をきかせつつ、要の会話内容は、実際に発声して違和感が喚起されない状態まで落とし込んでいくとよい
など、技巧的な面での指摘が目立ちました。しかしいっぽうで、
・(質問事項について)伝わった、会話がよい
・恋愛を題材にしているわりには心理描写が少ない
・雰囲気に自然に溶け込めるのが良い
・(起伏について)気にかかるようなら長編を書いてみてもいい
・ラストはぼかさずに明言してもよかったのでは
・作者の伝えたい部分が重くのしかかる=読ませられる
・心が洗われるようだ
など、具体的なストーリーラインには多大な好評が寄せられました。
松葉氏の「最終聖職者」については、
・冒頭やや描写過多(なので『だれる』)
・死刑のシーンはもっと簡潔でいい
などの指摘を除くと、
・「聖職者」への世俗的なイメージと小説におけるキャラクター性にギャップがあり、そこにユーモアがある
・人物の特徴づけがよい
・比喩が巧み、イメージの増殖と作品の演出に貢献している
・言葉(カタカナなど)の用い方がおもしろい
・わけがわからないところが却って痛快
・題の時点で何かに勝っている
など、絶賛に近い意見が多数寄せられました。
以上で批評会の報告を終わります。
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